農業生産法人とは〜概要〜

農業生産法人とは、農業経営をする上で農地に対する、所有権や賃借権、地上権等の権利を取得できる法人です。
農業生産法人以外の法人でも、「農地を適正に利用していない場合には、使用貸借、賃貸借を解除する。」という条件が入った契約を書面で行っている場合に限り、使用貸借、賃貸借が認められるようになりましたが、会社として農地を取得できるのは農業生産法人のみということになります。
農業生産法人となるには、農地法で規定する要件を満たし農地の権利取得に関する許可を得る必要があります。

農業生産法人とは諸要件

(1)農業法人とは

農業法人とは、農業を事業目的とする法人の総称で、具体的に 農畜産物 の生産や加工・販売など農業に関連する事業を行う 法人のことをいいます。  「農畜産業の生産を行う法人」のことを通称、農業法人と呼んでいますが、法律上の名称ではなく、いわば俗語です。
「法人」とは、法律に基づき、団体に法律上の「人格」を与えられたもので、一般の人間(自然人)と同じように法律上の権利・義務の主体となることができます。
一般には公益法人(学校法人、宗教法人など)、営利法人(株式会社など)、中間法人(協同組合、労働組合など)という分類で制度化されています。

農業法人は、制度の面から大きく次の2つに分けることができます
 

1.会社法人(会社の形態をとるもの)

 

2.農事組合法人(組合の形態をとるもの)
会社法人は、営利を目的とする法人で、株式会社などが代表例としてあげられます。
これに対し、農事組合法人は、農業経営等を法人化するため、農業独特のものとして設けられたものであり、、いわば協同組織的性格を有しています

 

(2)「農業生産法人」と「農業法人」は違うのでしょうか。 

農業法人は、農地を利用するか否かによって、「農業生産法人」と「その他の農業法人」に大別されます。農地法上からの分類では、農地を必要として農地法上の規制を受ける農業生産法人と農地を必要としない一般農業法人に分けられます。
農業生産法人というのは、農地法で規定された呼び名で、耕作の目的で農地や採草放牧地を利用して農業経営を行うことのできる法人です。

農業生産法人になるためには、農事組合法人(農業経営を行うもの)、合同会社、合名会社、合資会社又は株式会社(株式の譲渡制限を定めるもの)で、農地法に規定された一定の要件(事業要件、構成員要件、業務執行役員要件)を満たす必要があります。
 いわゆる野菜工場でのトマト栽培、ガラスハウスでの花き栽培、鶏舎での養鶏など、農地を利用しない経営の場合は、農業生産法人の要件を満たしている必要はありません。
農地の権利を取得するためには、農地法の許可が必要となってくる のですが、 その許可要件の1つとして、「農業生産法人であること」があげられています。
農業生産法人の設立は、あくまでも農地の権利を取得するための要件の1つであって、農業生産法人の設立手続きが、単独で法定されているわけではありません
 

1.法人形態要件
農業生産法人となることができるのは、以下に限定されています。
・株式会社(株式譲渡制限会社)
・持分会社(合同会社、合名会社、合資会社)
・農事組合法人(2号法人に限る)
 

2.事業要件
農業生産法人の事業の要件は「主たる事業が農業と※関連事業(法人の農業と関連する農産物の加工販売等)」です。具体的に、直近3カ年において、その農業に係る売上高が過半をしめていること。 (新規の場合は、今後3カ年の事業計画に基づいて判断されます)。

これにより、農業生産法人は今まで以上に、事業の多角化による経営の安定発展や、周年雇用による労働力の安定的な確保を図ることができます。 
※@法人の農業に関連する事業
・農畜産物の製造加工
・農畜産物の貯蔵、運搬又は販売
・農業生産に必要な資材の製造
・農作業の受託
 A農業と併せて行う林業 

 

3.構成員要件
構成員とは、法人を組織している出資者のことです。

構成員の要件は、その法人の構成員【組合員、株主(ただし、自己株式を保有している当該法人を除きます。)または社員】の全員が以下のいずれかに該当する必要があります。
@農地または採草放牧地の所有権を移転するか又は賃借権等の使用収益権を設定・移転することによりその法人に農地または採草放牧地を提供した個人
A法人の農業(農業関連事業を含む)の常時従事者
原則として年間150日以上
B現物出資を行った農地保有合理化法人 、地方公共団体、農業協同組合、農業協同組合連合会
C法人に農作業の委託を行っている農家
D農業法人投資育成会社
E※継続的取引関係を有する者

※継続的取引関係を有する者とは、

●農業生産法人の事業に係る物資の供給又は役務の提供を継続して受ける法人
●農業生産法人の事業に係る物資の供給又は役務の提供を継続して行う個人・法人

注)「継続して受ける者」「継続して行う者」に該当するには、3年以上の期間取引を行うことを内容とする契約を締結していることが必要です。
注2)継続的取引関係を有する者とは

産直契約している個人
法人とライセンス契約を結んでいる種苗会社
農産物の購入契約をしている食品メーカー、食品流通業者、スーパー、生協
農産物宅配の運送契約をしている運送業者
堆肥・苗木等の供給契約をしている農業資材提供者など

原則、取引関係者の議決権は、法人の総議決権の4分の1以下まで
(尚、特例措置により、ただし、農業経営改善計画の認定を受けた農業生産法人については、全体の2分の1未満の範囲内で出資が認められています)。

農地法の改正により、農業生産法人への出資について、1構成員当たりの出資制限10分の1を廃止し、4分の1以下まで出資可能にするとともに、農商工連携事業者など一定の者については2分の1未満まで可能になりました。

 

4.業務執行役員の要件

農業関係者が経営の主宰権をとれるよう、農業(関連事業を含む)常時従事者たる構成員(常時従事構成員)は、役員の過半を占めることが必要です。
農作業については、市場開拓、労務管理等の企画管理業務に適切に対応できるよう、常時従事構成員のうちの過半の者が、原則として60日以上従事することとなつています。 

例)出資者が8人いたとすると、

@3人は、法人の農業に従事する構成員でなくてもよい

A上記を除く5人(常時従事構成員)のうち3人(常時従事構成員の過半)は、原則として60日以上従事するものである必要があります。

*1(農業従事要件)
「常時従事構成員」とは、法人の行う農業(関連事業を含む)に常時(原則150日以上)従事する構成員のこと。役員の過半(半分では不可)は、常時構成員でなくてはならない。なお、法人の行う農業には、その他の事業は含まれない。
*2(農作業従事条件)
常時従事構成員の農作業従事条件は、常時従事構成員の過半が農作業に原則として60日以上従事すればよい。

 

 

農地法改正による賃借等の設定による農地の利用について
平成21年12月15日施行の農地法改正により、農業生産法人以外の法人であっても下記の要件を満たすことにより、使用貸借又は賃貸借により農地または採草放牧地を借りて農業をすることが出来るようになりました
また、法人の組織形態についても制約はありません
@農地等の権利を取得した後その農地等を適正に利用していないと認められる場合にその契約を解除する旨の条件が、書面による契約に付されること

A地域の農業における他の農業者との適切な役割分担の下に継続的かつ安定的に農業経営を行うと見込まれること

Bその法人の業務執行役員のうち1人以上の者がその法人の行う耕作等の事業に常時従事すると認められること。 

 

(3)農地を賃貸借出来る存続期間は?

民法の規定により賃貸借の存続期間は20年以内とされていますが、農地の賃貸借については民法の特例として50年以内まで可能です。〔農地法第19条〕

実際の賃貸借期間は借り手と貸し手が交渉して決める。期間拡大により、貸し手にとっても借り手を見つけやすくなり、賃貸料収入の安定確保につながります。

 

(4)農地等の賃貸借の解除等について

賃貸借の期間満了前に更新しない旨の通知(通知には都道府県知事の許可が必要)をしないときは、従前と同一条件でさらに賃貸借をしたものと見なされます。〔農地法第17条〕
農地の賃貸借契約を解除・解約する場合には、原則として都道府県知事の許可を受ける必要があります。〔農地法第18条〕
                賃貸借の解約等の制限 農林水産省ホームページ 

貸し手が長期間の賃貸に不安な場合は、借り手との合意の上で、現行の農地版定期借地権「農用地利用集積計画」の枠組みを活用すれば、計画期間終了時に必ず農地を返してもらえる。 

 

(5)農業経営基盤強化促進法に基づく農地の売買・貸借の制度
@個人や法人の方が、農地を売買又は貸借する場合、農地法第3条の許可を受ける方法のほか、農業経営基盤強化促進法に基づく農用地利用集積計画(利用権設定等促進事業)を利用する方法があります。

A農用地利用集積計画は、地域の農地に関する権利移動を定めたもので、市町村が作成します。
B農用地利用集積計画により設定された賃借権については、農地法の法定更新の規定を適用しないこととしておりますので、賃貸借の期間が満了すれば貸し手は賃貸していた農地を自動的に返還してもらえます。なお、農地の貸し手と借り手が引き続き賃貸借を希望する場合は、市町村が再度、農用地利用集積計画を作成・公告することにより再設定することができます。

                 農用地利用集積計画  農林水産省ホームページ

1.「農業生産法人」は農地を購入あるいは利用権設定をして、農業経営を行うことができます。
2.「特定農業法人」は地域の過半の農地を守ることを地権者と約束した法人で「認定農業者」としてみな農業生産法人報告書の提出義務があります。

 

(6)農業生産法人報告書の提出義務 

すべての農業生産法人は農地法第6条の規定に基づき、毎事業年度の終了後3ヵ月以内に経営地のある市町村の農業委員会に農業生産法人報告書を提出しなければなりません。例え
ば12月末が決算期だとしますと、3月末までに報告しなければなりません。農地法では、農業者や農業生産法人以外は農地の権利取得を認めておりません。そのため、報告書が未提出の農業生産法人の場合、権利取得者としての資格を有しているか否かの判断ができず、事業状況を把握することができないため、農地基本台帳の整備や諸証明の発行業務に支障をきたすことになりますので、必ず提出するよう指導しています。

 

農業参入がしやすくなりました

 (1)農業参入がよりしやすくなりました 
平成21年12月15日に改正農地法が施行されて、一般企業が農業参入がしやすくなりました。
 

従来企業が農地を取得して農業を経営するには農業生産法人を設立する方法しかありませんでした(旧農地法)。しかし農地法の改正により、株式会社やNPO法人などが農業生産法人の要件を満たさなくても、農地を賃貸借または使用貸借して農業を経営する場合に限り、参入することができるようになりました。

   

農業従事者の高齢化、農業の後継者不足により日本の耕作放棄地は増加の一途をたどっています。農業の衰退は日本の食糧自給率の下降に直結します。この現状を打破する救世主とみられているのが企業による農業参入です。

昔から農業をやりたかった経営者様、日本の未来を憂う経営者様、地域の活性化をしたい経営者様、農業参入を本気で考えてみませんか?

   

(2)農業参入要件

平成21年12月の農地法改正により、貸借(使用貸借、賃貸借)による農地権利の移転に限り、一定の要件を満たせば農業生産法人以外の法人でも許可を受けることができるようになり、農業参入に関して一般企業への門戸が大きく開かれることになりました。このことは農地法第3条第3項に規定されています。

 

@解除条件付き貸借契約要件

貸借により農地を使用する権利を取得しようとする者が、取得後において農地を適正に利用していないと認められる場合には、使用貸借または賃貸借を解除するという条項が契約書面に記載されていることが必要です。
具体的にいうと、許可申請をしている法人が万一農業から撤退することになった場合を想定し、農業委員会または都道府県知事は許可申請を審査する際に、次の4つの事項が契約書面に記載されているかを確認することを求められています。
(イ)農地等を明け渡す際の原状回復義務者は誰か
(ロ)原状回復費用の負担者は誰か
(ハ)原状回復がなされないときの損害賠償の取決め
(ニ)期間の途中での契約終了について違約金支払の取決め

A地域での適切な役割分担要件

これは非常に大事です。特に事前に農業委員会やJAなどとの協力・指導を得ながら進めることが重要です。これはわかりやすく言うと、地域社会と協力していけるかどうかということです。適切な役割分担とは、地域の農業の維持発展に関する会合に出席したり、水路などの共同利用施設の取決めを守ることなどで、確約書、誓約書などの形で協定を結ぶことが求められます。そのうえで継続的安定的に農業を経営できると見込まれることを営農計画書等で示すことが必要になります。

 

※なお、農地法第3条第3項の規定により3条許可を受けた者(法人も個人も)は、許可後の農地の利用状況について、農業委員会または都道府県知事に報告しなければなりません(改正後かなり厳しく取り締まっている地域もあります)報告は毎事業年度終了後3ヶ月以内に、農地法施行規則第23条に掲げる事項を記載する必要があります。この他、許可を受けた者が、上記の要件を満たしていないことが判明した場合、農業委員会等はその者に対し必要な措置を講ずるよう勧告できるようになりました。この勧告に従わなかった場合、農業委員会等は必ず許可を取り消さなければならないと定められています

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