遺言書には、上述のとおり、通常の方式として
①自筆証書遺言
②公正証書遺言
③秘密証書遺言
という3つの方式があります(例外規定除く)。
そして、公正証書遺言以外のものは家庭裁判所へ遺言の検認を申し立てなければなりません。 なお、検認手続きが必要なのは、自分で作成・保管する自筆証書遺言と秘密証書遺言であり、公証人役場で作成・保管する公正証書遺言は偽造などのおそれがないので、検認手続きは必要とされません。よって上述した通り、公正証書遺言以外の場合には、手間がかかります。 遺言者の出生から死亡までの戸籍、相続人全員の戸籍謄本が必要ですので、事前に相続人関係図(≒当事者目録)を作成して相続関係を整理しておくと手続きがスムーズです。
(1)遺言書の検認とは
遺言書(公正証書による遺言を除く)の保管者又はこれを発見した相続人は,遺言者の死亡を知った後,遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して,その「検認」を請求しなければなりません。
また,封印のある遺言書は,家庭裁判所で相続人等の立会いの上開封しなければならないことになっています。検認とは,相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに,遺言書の形状,加除訂正の状態,日付,署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。
※検認を受けないで遺言を執行したり、家庭裁判所外で封印のある遺言書を開封した者は、5万円以下の過料に処せられますので注意が必要です。また、故意に遺言書を隠匿していた場合には、相続欠格者として相続権を失うことになります。
(2)検認の申立人(検認を依頼する人)
検認の申立は、被相続人の死亡当時の住所地を管轄する家庭裁判所に行います。
検認の申立人は、
①遺言書の保管者
②遺言書を発見した相続人
(3)遺言書の検認申立の期間・期限
特にいつまでという期限は定められておりませんが、 相続が発生すると時間に追われます。よって、被相続人死亡後出来る限り早く又は発見後はすぐに申し立てをすることをお勧めします
(4)家庭裁判所の検認には時間がかかる
「検認」を受ける時に考えておくべきことは、裁判所によっては順番待ちで、又は書類の不備で手続きが終了するまでに1ヶ月以上の期間(2ヶ月以上かかる場合も)がかかるということです。
従って、その間は銀行等で払い戻しが 出来ないため、被相続人と同居していた相続人が、いろいろな支払いや生活資金に困るということも発生します。預貯金口座の大半が被相続人名義になっているような場合には、その対策も考えておく必要があります。
(5)検認手続終了後
家庭裁判所での検認が実施されると、検認調書が作成され、その後で遺言書の原本に「検認済み」の表示をした上で返還されます。検認に立ち会わなかった相続人等(受遺者等の利害関係人)に対しても、検認がなされた旨の通知が行きます。